症例報告
先天性第X因子欠乏症を伴った早期胃癌の1切除例
高橋 孝夫, 山村 義孝, 松尾 浩, 小寺 泰弘, 紀藤 毅, 豊田 英樹*
愛知県がんセンター消化器外科, 同 消化器内科*
症例は75歳の女性.食欲不振で近医受診.精査にてA領域小彎の早期胃癌と診断された.入院時血液凝固機能検査でプロトロンビン時間の延長など著しい凝固異常を認めたため,凝固因子活性を測定した結果,第X因子のみが34%と低下しており,第X因子欠乏症と診断された.手術時,術後の出血コントロールに使用する複合型凝固因子製剤PPSB®-HTの至適投与量を求めるため,術前に同剤の輸注試験を施行した.手術はPPSB®-HTの投与下にD1+No.7リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を行った.術後3日間は同剤を投与し,術中,術後に異常出血を認めなかった.
先天性第X因子欠乏症はまれな疾患で,その手術報告例は本邦で2例だけである.輸注試験を基に凝固因子製剤の投与量,投与間隔を決定することにより,術中,術後の第X因子活性を維持し,安全に手術が可能であると考えられた.
索引用語
congenital factor X deficiency, bleeding tendency, gastrectomy
日消外会誌 30: 2191-2195, 1997
別刷請求先
高橋 孝夫 〒464 名古屋市千種区鹿子殿1-1 愛知県がんセンター消化器外科
受理年月日
1997年7月2日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|