胚細胞性腫瘍への分化を示したhuman chorionic gonadotropinおよびalpha-fetoprotein産生性胃癌の1例

丸山　道生, 工藤　敏文, 桑原　博, 高松　督, 菅野　範英, 江渕　正和

東京都立大久保病院外科

　症例は49歳の女性．壁外性発育をしめす胃原発性巨大腫瘍で，血清HCG（17,000 mIU/ml）およびAFP（489 ng/ml）上昇を示した．腫瘍は膵，肝に直接浸潤し，肝転移も1個存在した．胃全摘，膵体尾部，脾，肝外側区域合併切除を施行し，Stage IVb（H1P0N0T4）であった．根治度Bにもかかわらず，術後45日で肝再発により死亡し，著しく悪性度の高い腫瘍であった．切除標本の組織学的所見で，粘膜には低分化腺癌（CEA陽性），浸潤部ではchoriocarcinoma様の部分（HCG陽性），およびyolk sac tumor様の部分（AFP陽性）を認め，胃癌のchoriocarcinoma，yolk sac tumorへの分化と考えられた．この腫瘍の組織発生は粘膜内の腺癌細胞のretrodifferentiationと考えられ，同時に2つのextra-embryonic elementに分化を示したきわめてまれな症例である．

索引用語
choriocarcinoma of the stomach, yolk sac tumor of the stomach, human chorionic gonadotropin and alphafetoprotein producing gastric cancer

別刷請求先
丸山　道生　〒160　東京都新宿区歌舞伎町2-44-1　東京都立大久保病院外科

受理年月日
1997年6月11日

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