異時性多発大腸癌根治術後に発症した同時性多発胃癌の1例

栗原　直人, 篠原　央, 米川　甫, 町村　貴郎, 古川　俊治, 西堀　英樹, 立松　秀樹, 浦上　秀次郎, 根本　雄治, 向井　美和子^1）

国立大蔵病院外科, 同　病理^1）

　症例は42歳の女性．主訴は上腹部不快感．1983年（30歳時）S状結腸癌にてS状結腸切除術，1989年（36歳時）上行結腸癌にて右半結腸切除術施行．今回，1995年9月28日に胃癌にて胃全摘術，脾合併切除，Roux-en Yにて再建した．切除胃は進行胃癌2病変と早期胃癌5病変を有する多発胃癌であつた．胃癌病巣の各種癌関連抗原の発現は，p53，Ki-67は陽性，c-erbB-2，bcl-2は陰性であった．背景胃粘膜は幽門部を中心とした腸上皮化生を伴う慢性胃炎であり，胃内に広範囲にヘリコバクター・ピロリ感染が認められた.
　本症例は異時性多発大腸癌の根治術後に発症した同時性多発胃癌であり，多発大腸癌と多発胃癌が重複した報告例は自験例のみであった．多発癌フォローアップのためのhigh risk groupの設定が重要であると考えられた．

索引用語
multiple gastric carcinomas, metachronous cancers, high risk factor

別刷請求先
栗原　直人　〒157　東京都世田谷区大蔵2-10-1　国立大蔵病院外科

受理年月日
1997年9月9日

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