症例報告
肝炎既往のない若年者肝細胞癌の1例
中力 美和1), 猪飼 伊和夫1), 山本 正之1), 松下 利雄2), 野口 正人3), 左合 直3), 山岡 義生1)
京都大学医学研究科消化器外科1), 福井赤十字病院外科2, 同 放射線科3)
20歳未満で発症する肝細胞癌は少なく,またそのほとんどはB型肝炎のキャリアーである.今回,我々は肝炎既往のない17歳男性の肝細胞癌を経験した.症例は腹痛で発症し,両葉にまたがる多発性肝腫瘍が指摘された.入院精査中に腫瘍の破裂を示唆する強度の腹痛をきたし動脈造影を施行されたが,造影剤の漏出は認めなかった.肝動脈塞栓療法が施行され,腫瘍へのリピオドールの集積は良好であった.しかし腫瘍は完全壊死には至らなかったため発症1年後に当院に紹介され,肝左三区域切除を施行された.腫瘍は低分化型肝細胞癌で非癌部には肝炎を認めなかった.また血清の肝炎関連ウイルスマーカー,HBV-DNA,HCV-RNAはすべて陰性であった.
索引用語
juvenile hepatocellular carcinoma, hepatocellular carcinoma without hepatitis infection
日消外会誌 30: 2292-2296, 1997
別刷請求先
猪飼伊和夫 〒606-01 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学研究科消化器外科
受理年月日
1997年9月9日
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