原著
胃癌術前化学療法における組織学的・細胞学的効果に関する研究―化学療法前後における癌細胞核面積の評価―
柳沢 真司
千葉大学第1外科
胃癌症例29例を対象とし,術前化学療法の評価として,化学療法前後の癌細胞核面積(NA)の変化の解析を試みた.化学療法として,5-fluorouracil(5FU)300 mg/m2/dayを手術前日まで持続投与した.胃癌取扱い規約による組織学的効果判定基準では,Grade 0:8例,1a:13例,1b:5例,2:3例,3:0例と多くは軽度の変化に留まっていた.NAは化学療法前:46.2±6.86 µm2,後:57.7±10.80 µm2と化学療法後に有意に増大していた.組織学的効果を再検討し,A群:Grade 0および1aのうち変化の微弱な症例,B群:Grade 1aのうち胞巣構造の萎縮・崩壊などが顕著な症例および1b,2とした場合,核面積比(=化学療法後NA/化学療法前NA)はA群:1.12±0.170,B群:1.42±0.235と有意にB群で高値であり組織学的効果と有意な関連を示した.Grade 1a症例の一部でも核の膨化がみられ,より早期の段階での抗癌剤に対する感受性を反映していると考えられた.
索引用語
gastric cancer, preoperative chemotherapy, histological changes, swelling of cancer cells nuclei
別刷請求先
柳沢 真司 〒292 木更津市桜井1010 君津中央病院外科
受理年月日
1997年10月1日
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