原著
肝切除周術期における血清ヒアルロン酸濃度
溝江 昭彦, 藤岡 ひかる, 東 尚, 古井 純一郎, 冨岡 勉, 兼松 隆之
長崎大学医学部第2外科
肝細胞癌の肝切除19症例を対象として,肝切除周術期に血清ヒアルロン酸(以下,HAと略記)濃度を測定し,肝機能評価法としての有用性を検討した.肝切除前HA濃度は,術前ICG R15(r=0.916,p<0.01),肝切除前門脈圧(r=0.650,p<0.02)と有意の正の相関を示し,99 mTc-GSAの血中消失指標HH15とは正の相関(r=0.920,p<0.01)を,肝集積指標LHL15とは負の相関(r=-0.904,p<0.01)を示した.またclinicai stage IとIIのHA濃度に有意差を認めた.肝切除前のHA値で群別し術後合併症発生率を検討すると,50 ng/ml未満と100 ng/ml以上の群間に有意差を認めた(p<0.05).術後合併症群(n=5)と非合併症群(n=14)でHA濃度の術後変動を比較すると,術後1日目より合併症群が有意に高値であった.以上より術前の血清HA濃度は肝予備能の指標として有用で,術後の経時的測定は転帰の予測に有用である.特に,高値例では肝不全などの術後合併症の発生に注意し,厳重な経過観察が必要である.
索引用語
hyaluronic acid, hepatic resection, indocyanine green retention rate (ICG R15), portal vein pressure, 99 mTc-GSA
別刷請求先
溝江 昭彦 〒852 長崎市坂本1-7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1997年9月9日
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