症例報告
回腸カルシウム塩腸石の1例
松友 寛和, 後藤 明彦, 仁田 豊生, 市橋 正嘉, 多羅尾 信
羽島市民病院外科
症例は68歳女性.32年前に虫垂切除術を施行されている.腹痛,腹満感,発熱を主訴に当科外来を受診した.右下腹部に有痛性腫瘤を触知し,下腹部を中心に腹膜刺激症状を認めた.白血球数,CRPは高値であった.腹部単純X線写真で小腸ガス,鏡面像を認め,腹部CTでは腸管内に石灰化を伴う異常影を認めた.汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行したところ,回腸に狭窄を認め,その口側は嚢状に拡張し穿孔を伴っていた.内腔に硬い腫瘤を多数触知した.回腸約50 cmを切除し,端々吻合を施行した.腫瘤は腸石で,主成分は蓚酸カルシウムであり真性カルシウム塩腸石と診断した.真性カルシウム塩腸石はアルカリ性の回腸に形成されやすいとされている.自験例では癒着により回腸に狭窄を生じ,腸管内容が停滞し,アルカリ溶媒下でカルシウムが沈着して腸石を発生させたと考えられた.
索引用語
enterolith, calcium enterolith, acute abdomen
別刷請求先
松友 寛和 〒501-62 羽島市新生町3-246 羽島市民病院外科
受理年月日
1997年10月1日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|