胸部食道癌に対するリンパ節郭清

鶴丸　昌彦

虎の門病院消化器外科

　胸部食道癌では頸部，胸部，腹部に広い範囲にわたりリンパ節転移が見られることは周知の事実である．これらのリンパ節転移を可及的に郭清することが遠隔成績の向上につながるかについて明解に答える無作為試験はないが，Cox回帰モデルを用いた解析では積極的な郭清は遠隔成績を向上させると推論された．胸部食道癌では主占居部位別に見ると各領域で転移の密度には差があるが，リンパ節転移の範囲はほぼ同様であり，頸部から腹部までの広範な郭清を要すると思われる．頸部では肩甲舌骨筋の尾側が十分郭清できればよい．郭清の中心は上縦隔から頸部にかけて，気管旁（左右の反回神経周囲）であり，丁寧に忍耐強く郭清することが術後合併症を少なくするコツであると痛感している．

索引用語
esophageal carcinoma, lymph node dissection, three field dissection

別刷請求先
鶴丸　昌彦　〒105　東京都港区虎ノ門2-2-2　虎の門病院消化器外科

受理年月日
1997年11月5日

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