症例報告
表層拡大発育型早期胃癌の1穿孔例
上山 直人, 籠島 忠, 奥地 一夫, 中尾 武, 佐道 三郎1), 仲川 昌之1), 渡部 高昌1), 本郷 三郎1), 中野 博重2)
奈良県救命救急センター, 県立奈立病院外科1), 奈良県立医科大学第1外科2)
73歳の男性が胃癌穿孔性腹膜炎で搬送され,根治的胃全摘術を施行した.切除標本の肉眼所見では,C領域前壁のIIc+III型病変が穿孔し,同病変よりC領域後壁のIII型病変に連続して多彩な形態を呈する表層拡大浸潤型の早期胃癌を認めた.病理組織学的検索では,癌の深達度はIIc+III型の潰瘍周囲部のみsmで他の病変はmまでであった.潰瘍周囲の小動脈には狭窄や血栓性閉塞後の再灌流の所見が,血管壁には動脈硬化性変化などの所見がみられた.穿孔が生じた原因は不明であるがこのような血管内の虚血性変化や潰瘍部のカンジダ感染が影響を及ぼした可能性は否定できない.胃癌による播種性転移やリンパ節転移を認めなかった.患者は術後肺炎とカンジダ感染を合併したが,集中治療により改善し退院した.早期胃癌の穿孔は,進行胃癌の穿孔の場合と異なり予後は良好である.早期胃癌の穿孔はまれであるが,患者の状態が許せば,根治的胃切除を施行することが重要である.
索引用語
perforation of early gastric cancer, peritonitis, multiform type of early gastric cascer
別刷請求先
上山 直人 〒631-0846 奈良市平松1-30-1 奈良県救命救急センター
受理年月日
1997年10月1日
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