症例報告
胃癌肉腫の1例
井上 真也, 吉見 富洋, 登内 仁, 小野 久之, 雨宮 隆太, 小泉 澄彦, 長谷川 博, 板橋 正幸*
茨城県立中央病院・地域がんセンター外科, 同 病理*
癌肉腫は子宮・乳腺・食道などの臓器ではそれほどまれな疾患ではないが,胃の癌肉腫の報告例は少ない.今回,我々は胃噴門部原発の癌肉腫症例を経験した.症例は74歳の女性で,嚥下障害をきたしたため精査し,食道浸潤を認める胃噴門部癌の診断で,胸腹連続斜切開開胸開腹にて下部食道・胃全摘術を施行した.病理組織学的に,胃癌肉腫の診断であった.しかも癌成分と肉腫成分が複雑に混在,移行しており免疫組織学的に肉腫成分がS-100蛋白抗体に陽性反応を示す軟骨肉腫への分化を呈しており真性癌肉腫と考えられた.今まで報告されている癌肉腫の大部分は“いわゆる癌肉腫”であって,「真性癌肉腫」と診断されているものは,本症例をあわせ4症例しかない.本症例は癌細胞が何らかの理由により,軟骨基質の産生能を獲得し,形態的にも免疫組織化学的にも上皮細胞の性格を失い軟骨細胞の形質を発現していったものと考えた.
索引用語
carcinosarcoma of the stomach
別刷請求先
井上 真也 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学付属病院第1外科
受理年月日
1998年1月14日
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