特集
胃癌の浸潤・転移における間質の意義―スキルス胃癌と非スキルス胃癌とを対比して―
窪地 淳, 島田 敦, 松井 英男, 磯部 陽, 島 伸吾, 小川 信二1), 吉野 肇一1), 石引 久弥2), 北島 政樹3)
国立東京第二病院外科・臨床研究部, 東京歯科大学市川総合病院外科1), 国立埼玉病院外科2), 慶應義塾大学外科3)
スキルス胃癌と非スキルス胃癌とを対比し,臨床病理学的動態すなわち浸潤・転移への間質の意義について検討した.その結果,I型およびIV型コラーゲンに対する分解酵素活性値は,いずれも非スキルス胃癌で高い値を示していたが,TIMP-1はスキルス胃癌の癌組織中に豊富に存在し,胃癌患者の血清中においてもスキルス胃癌で高い値を示していた.
我々はいずれの胃癌においても癌組織内のコラーゲン産生が亢進していることを報告してきたが,今回の成績と考え合わせると,癌組織内へのコラーゲンの蓄積の差は,胃癌組織内のこの分解動態の差によって生じるものと考えられた.また,スキルス胃癌では間質の蓄積は,癌細胞が増殖・進展するために合目的に行われているものと推測され,血清中のTIMP-1の動態は,未分化型腺癌特にスキルス胃癌の臨床的特徴であるリンパ行性・腹膜播種と何らかのかかわりがあるものと考えられた.
索引用語
scirrhous type of gastric cancer, metalloproteinase and tissue inhibitor of metalloproteinasis, cancer invasion and metastasis of gastric cancer
別刷請求先
窪地 淳 〒152-0021 東京都目黒区東が丘2-5-1 国立東京第二病院外科
受理年月日
1997年12月3日
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