特集
消化器癌の浸潤転移における間葉系細胞の重要性―細胞外マトリックス破壊からみて
大谷 吉秀, 桜井 嘉彦**, 五十嵐 直喜, 横山 剛義, 木全 大, 亀山 香織*, 久保田 哲朗, 熊井 浩一郎, 北島 政樹
慶應義塾大学外科, 同 病理*, 国立栃木病院外科**
消化器癌の進展過程でのマトリックス分解酵素(matrix metalloproteinase:MMP)による細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)破壊における間葉系細胞の役割について検討した.I型,III型コラーゲンを分解するMMP-1は癌先進部組織で高い酵素活性を示した.MMP-1産生細胞の同定を目的にin situ hybridizationを行った結果,癌巣周囲の線維芽細胞や顆粒球にMMP-1 mRNAの発現を認めた.ヒト胃粘膜由来線維芽細胞の培養液にヒト胃癌細胞株MKN-74の培養上清を添加すると,単独培養に比べ高いMMP-1産生を認めた(p<0.05).また,ヒト胃癌細胞株TMK-1の腹腔内投与によるヌードマウス腹膜播種モデルでは,癌細胞を線維芽細胞の培養上清とともに投与することで結節数の有意な増加を認めた(p<0.01).以上より,消化器癌によるECM破壊に間葉系細胞が重要な役割を演じていることが確認された.
索引用語
stromal cells, invasion and metastasis of gastrointestinal carcinoma, matrix metalloproteinase
別刷請求先
大谷 吉秀 〒160-8582 東京都新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部外科
受理年月日
1997年12月3日
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