原著
食道・胃接合部癌の臨床病理学的検討―特に扁平上皮癌と腺癌の比較―
村上 信一, 野口 剛, 橋本 剛, 武野 慎祐, 平岡 善憲, 内田 雄三
大分医科大学第2外科
切除された食道胃接合部癌のうち扁平上皮癌15例と腺癌36例を臨床病理学的に比較検討した.腫瘍の主な占居部位は扁平上皮癌ではEC 7例(46.7%)であり,腺癌ではCE 25例(69.4%)であり,腺癌の占居部位は扁平上皮癌のそれに比べて有意にCE領域に多かった(p<0.01).扁平上皮癌の癌の食道側の距離は腺癌のそれに比べて有意に長かった(p<0.01).左開胸・開腹症例の癌口側端から食道断端までの距離は開腹のみのそれよりも有意に長かった(p<0.001).リンパ節転移では扁平上皮癌と腺癌ともに主に下部縦隔から腹部リンパ節に転移を認めた.扁平上皮癌の5年生存率は32.3%,腺癌のそれは16.1%で予後不良であった.癌の食道側の距離が食道裂孔を超える浸潤型の食道胃接合部癌に対しては,組織型を問わず左開胸・開腹による下部食道切除と胃全摘を行い,下部縦隔から腹腔内リンパ節を重点的にかつ合理的に郭清することが重要と思われた.
索引用語
carcinoma of esophagogastric junction, squamous cell carcinoma, adenocarcinoma
日消外会誌 31: 1057-1064, 1998
別刷請求先
村上 信一 〒879-5593 大分県大分郡挾間町医大が丘1-1 大分医科大学第2外科
受理年月日
1998年2月12日
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