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第31巻 第7号 1998年7月 [目次] [全文 ( PDF 562KB)]
原著

膵臓癌におけるvascular endothelial growth factorの発現とその意義―肝転移再発との関連性から―

相本 隆幸, 恩田 昌彦, 内田 英二, 松下 晃, 柳 健, 山村 進, 中村 慶春, 小林 匡, 田尻 孝, 浅野 伍朗

日本医科大学第1外科, 同 病理

 腫瘍血管新生は腫瘍の増殖や転移に必須であり,特にvascular endothelial growth factor(以下,VEGFと略記)は血行性転移との関連性が報告されている.膵癌では術前から潜在性肝転移が存在する可能性が指摘され,肝転移機序の解明が注目されている.今回,我々はVEGFの免疫組織化学的解析を行い,膵癌における意義を検討した.対象は膵癌38例で,第VIII因子関連抗原染色より微小血管数を計測,同時にVEGFの発現を検索した.VEGF陽性は9例(24%)で,微小血管数の平均は17.47±3.85であった.両者の間には有意の相関関係を認めた.臨床病理学的因子との検討では,VEGFの発現と静脈侵襲の間に相関関係を認めた.再発形式は肝転移15例(43%)で,VEGF陽性9例中,術後経過観察期間の短い3例を除く6例全例に肝転移を認めた.以上より,膵癌においてVEGFを介した血管新生が推測され,一部の肝転移例にVEGFの関与が示唆された.

索引用語
vascular endothelial growth factor, pancreatic carcinoma, liver metastasis, tumor angiogenesis

日消外会誌 31: 1767-1772, 1998

別刷請求先
相本 隆幸 〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科学教室

受理年月日
1998年3月11日

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