原著
血清総コレステロール値を用いた術後感染症の早期診断―多変量解析による検討―
秋谷 行宏, 恩田 昌彦, 古川 清憲, 鈴木 英之
日本医科大学外科学第1教室
血清総コレステロール値を用いて術後感染症の早期診断について検討した.1995年7月から1997年6月までの胃・大腸切除症例111例を対象に術後10日目までの術後感染の有無により感染群(13例)と非感染群(98例)に分けた.術後3日目の血液生化学検査項目を含む臨床データを両群間で単変量解析で比較したところ,感染群のリンパ球数,総コレステロール(TC),総蛋白は有意に低く,体温,脈拍数,CRPは高かった.多変量解析のロジスティック回帰分析では臓器別で,胃手術例ではTCを含む8項目,結腸手術例ではTCを含む3項目の組み合わせが良好であり,overallの正診率はそれぞれ95.1%,95.4%,sensitivityはともに80.0%であった.なお,直腸ではoverallの正診率は高かったがsensitivityは低かった.以上より,術後感染症は,術後3日目の総コレステロールを含む臨床データを用いたロジスティック回帰分析から早期診断可能であった.
索引用語
postoperative infection, early diagnosis, serum total cholesterol, multivariate analysis, digestive tract
日消外会誌 31: 1781-1787, 1998
別刷請求先
秋谷 行宏 〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
1998年3月11日
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