症例報告
多発性脾過誤腫の1例
田中 千弘, 大橋 広文, 三沢 恵一, 古市 信明, 山森 積雄, 上西 宏, 日比 俊也, 佐藤 哲也
岐阜県立岐阜病院外科
脾過誤腫はまれな疾患で,本邦では56例の報告がみられるのみで,ほとんどが単発例であり,多発例は4例のみと少ない.今回,多発性の脾過誤腫を経験したので報告する.
症例は19歳の女性.左季肋部痛にて発症した.超音波にて脾門部に突出する低エコー像,CTにて軽度造影効果を認める低吸収域像を認めた.血管造影で脾門部や,脾の尾側に多発する結節性濃染像を認め,確定診断は困難であり,悪性腫瘍も否定できないため脾摘出術を施行した.摘出標本では黄色調の大小7個の結節が存在し,組織学的検査で混合型の脾過誤腫と診断された.脾過誤腫は組織型の多様性から術前診断が困難であるとされているが,典型的な画像所見を呈し術前診断が可能な症例では,良性疾患であり脾温存も考慮に入れるべきと思われた.
索引用語
splenic tumor, splenic hamartoma, multiple splenic hamartoma
日消外会誌 31: 1807-1810, 1998
別刷請求先
田中 千弘 〒500-8226 岐阜市野一色4-6-1 岐阜県立岐阜病院外科
受理年月日
1998年2月12日
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