症例報告
Yグラフトバイパス術13年後,右総腸骨動脈偽性動脈瘤直腸内破裂を認めた1例
菊地 勤, 高畠 一郎, 長尾 信
有松中央病院外科
今回,我々は下血で発症した右総腸骨偽性動脈瘤直腸破裂を,早期診断し,手術により治癒した1例を経験したので報告する.
患者は82歳の男性で,両総腸骨動脈,左大腿動脈閉塞症に対し,13年前にYグラフトバイパス術を施行.1996年6月24日に,4日間持続する下痢のため入院した.入院2日目より下血を認め,CTスキャンにて右総腸骨偽性動脈瘤直腸内破裂と診断し,緊急手術を施行した.まず,左大腿右大腿動脈バイパス術を施行し,その後開腹術を施行した.Yグラフト右総腸骨動脈吻合部に動脈瘤を認め,直腸内破裂を確認後,Yグラフト右枝根部と内外腸骨動脈を結紮した.グラフト右枝および動脈瘤の一部を切除し,偽性動脈瘤の内側より直腸瘻孔部をデブリートメントし,縫合閉鎖した.術後,直腸縫合不全のため一時的人工肛門を必要としたが,1996年12月12日治癒退院し,現在外来通院中である.
偽性動脈瘤直腸破裂は,出血や感染により死亡率が高い.また直腸への破裂は極めてまれで,自験例を含め偽性動脈瘤大腸破裂は本邦2例目である.
索引用語
pseudoaneurysm, Y-graft bypass, pseudoaneurysmal-enteric perforation
日消外会誌 31: 1821-1825, 1998
別刷請求先
菊地 勤 〒920-0934 金沢市宝町13-1 金沢大学附属病院第1外科
受理年月日
1998年2月12日
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