症例報告
食道類基底扁平上皮癌の1例
小向 慎太郎, 山洞 典正, 山本 智, 岡田 貴幸, 薮崎 裕, 薛 康弘, 岡 邦行*, 畠山 勝義**
水戸済生会総合病院外科, 同 病理部*, 新潟大学第1外科**
症例は79歳の女性.主訴は食思不振.上部消化管内視鏡検査にて上門歯列より32 cmの食道前壁に径4 cmの隆起性病変を認め,その腫瘤に接しルゴール不染帯を認めた.生検にて扁平上皮癌と診断されたため,食道亜全摘術を施行した.病理組織診断では隆起性病変は深達度mpの類基底扁平上皮癌,ルゴール不染帯は深達度smの扁平上皮癌であった.本症例は術後5か月で局所再発および,胸膜転移再発で死亡した.類基底扁平上皮癌は粘膜下に主座を置き正常粘膜に覆われていることが多いため術前診断が困難である.予後は不良であり,有効な治療法の確立が望まれる.
索引用語
esophageal carcinoma, basaloid-(squamous) carcinoma
日消外会誌 31: 1869-1873, 1998
別刷請求先
小向慎太郎 〒951-8122 新潟市旭町通1-754 新潟大学医学部第1外科
受理年月日
1998年3月11日
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