症例報告
同時性に多発した大腸・小腸T細胞性悪性リンパ腫の1例
平田 静弘, 岸川 英樹, 永渕 一光, 山崎 徹, 米増 博俊
北九州市立若松病院外科, 九州大学第2病理*
同時性に多発した大腸原発のT細胞性悪性リンパ腫を経験した.症例は89歳の男性,主訴は下痢.注腸造影検査,大腸内視鏡検査にて,S状結腸,直腸に潰瘍性病変を認め,同部よりの生検にて上記と診断された.手術待機中にS状結腸腫瘍部が穿孔をきたし,緊急手術を施行した.切除標本では大小の病変が多発し小腸にも病変を認めた.本症例は術後も血性水様便が持続し,貧血,低蛋白血症が進行して71日目に死亡したが,残存腸管にもT細胞性悪性リンパ腫が多発していることが推察された.本疾患はまれで,本邦では16例の報告がみられたが,B細胞性悪性リンパ腫と比べ予後は極端に悪く,注意すべき疾患であると考えられた.
索引用語
T-cell malignant lymphoma, colon, mutiple
日消外会誌 31: 1902-1906, 1998
別刷請求先
平田 静弘 〒808-0035 北九州市若松区白山1-8-3 北九州市立若松病院外科
受理年月日
1998年3月11日
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