症例報告
内膀胱上窩ヘルエアの1例
大江 信哉, 渡部 修一, 稲葉 行男, 野村 尚, 鈴木 明彦, 飯沼 俊信, 林 健一, 千葉 昌和
山形県立河北病院外科
まれな内膀胱上窩ヘルニアの1例を報告する.症例は腹部手術既往のない73歳の男性.過去3回イレウスで入院,保存的治療で軽快している.今回,頻回の嘔吐と下腹部痛を主訴に来院し,イレウスの診断で入院.小腸造影にて回腸末端付近の途絶がみられたため,小腸腫瘍を先進部とする腸重積あるいは内ヘルニアによるイレウスを疑い手術を施行した.開腹所見で回腸の内膀胱上窩ヘルニアヘの嵌頓によるイレウスと診断された.
手術は回腸部分切除,ヘルニア嚢の飜転縫縮とヘルニア門の縫合閉鎖を施行した.
正中臍靭帯と外側臍靭帯の間にヘルニア門を有する内膀胱上窩ヘルニアのうち,ヘルニア嚢が恥骨後方のRetzius腔に向かう内膀胱上窩ヘルニアは極めてまれである.
術前に本症が確定診断に至った例はないが,手術既往のない高齢者のイレウスの際は,本症の存在も念頭におくべきであると思われた.
索引用語
internal supravesical hernia, internal hernia, intestinal obstruction
日消外会誌 31: 2020-2023, 1998
別刷請求先
大江 信哉 〒999-3511 山形県西村山郡河北町谷地字月山堂111 山形県立河北病院外科
受理年月日
1998年5月19日
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