特集
胃癌のリンパ管侵襲におけるE-cadherin,autocrine motility factor receptorの関与について
土岐 祐一郎, 塩崎 均, 川西 賢秀, 五福 淳二*, 矢野 雅彦, 辻仲 利政, 井上 雅智, 門田 守人
大阪大学第2外科, 総合加納病院外科*
癌細胞の細胞接着能をE-cadherin(ECD)で運動能をautocrine motility factor receptor(AMFR)にて評価し,胃癌のリンパ管侵襲(ly),リンパ節転移(n)の術前予測が可能であるかどうかを検討した.ECD,AMFRの発現は切除標本および術前生検標本の免疫染色にて評価し,同時に末梢血中のE-cadherin可溶性fragment(SECD)をELISAにて測定した.
分化型の胃癌ではECDの発現はly,nの有無と負の相関を示したが,低分化型では関連を認めなかった.AMFRの発現は深達度と相関を示すが,ly,nとは相関を認めなかった.また,ECDとAMFRの発現は負の相関を示し,両者の共発現パターンで分けるとECD(-)/AMFR(+)の症例が最も悪性度が高いと考えられた.nとlyの有無が一致しない症例が21%に認められたが,ECD,AMFRの発現性では不一致症例を予測できなかった.しかし,SECDはnまたはlyが陽性の症例で高値を示しており,n,lyの術前予測の指標として今後臨床応用が期待された.
索引用語
E-cadherin, autocrine motility factor receptor, lymphatic involvement in gastric cancer
日消外会誌 31: 2162-2166, 1998
別刷請求先
土岐祐一郎 〒565-0871 吹田市山田丘2-2 大阪大学医学部第2外科
受理年月日
1998年7月22日
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