胃癌におけるリンパ管侵襲の術前推測の可能性に関する検討

安武　亨, 寺田　隆介, 山口　榮一郎, 辻　孝, 七島　篤志, 澤井　照光, 山口　広之, 中越　享, 綾部　公懿, 田川　泰^＊

長崎大学医学部第1外科, 同　医療短期大学部^＊

　胃癌において術前にリンパ管侵襲の有無を推測できるか否かを臨床病理学的，細胞・分子生物学的に検討した．臨床病理学的には1，129例，細胞・分子生物学的には100例の胃癌を対象とした．腫瘍径はリンパ管侵襲陽性（ly（＋））例で平均71 mm，陰性（ly（－））例で43 mmとly（＋）例で有意に腫瘍径が長かった（p＜0.001）．また，蛍光免疫細胞化学-fluorescence in situ hybridization（FISH）同時染色法を用いてproliferating cell nuclear antigen（PCNA）染色性と17番染色体数を同時に検討した．PCNA陽性で17番染色体数的異常を認める細胞の比率はly（＋）例で平均15.3％，ly（－）例で9,0％とly（＋）例で有意に高かった（p＝0.0001）．これらの方法は，生検標本で十分に施行可能であつた．以上より，腫瘍径が長い症例，PCNA陽性かつ17番染色体数的異常陽性細胞を多く認める症例はly（＋）の頻度が高く注意を要すると考えられた．

索引用語
lymphatic vessel invasion of gastric cancer, preoperative estimation, simultaneous detection of PCNA and chromosome 17

別刷請求先
安武　亨　〒852-8102　長崎市坂本1-7-1　長崎大学医学部第1外科

受理年月日
1998年7月22日

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