原著
切除不能または非治癒因子を有する高度進行胃癌に対する術前化学療法の可能性
梨本 篤, 佐々木 壽英, 田中 乙雄, 筒井 光広, 土屋 嘉昭, 牧野 春彦
新潟県立がんセンター新潟病院外科
術前診断にて根治切除不可能と判定した進行胃癌21例に対し,1993年より術前化学療法(NAC)としてFLP療法(CDDP 50 mg/m2,day 1 day 8,5FU 333 mg/m2 and Leucovorin 30 mg/body,day 1~8)を2クール以上施行してきた.19例に手術がなされ,18例(85.7%)が切除可能であった.【成績】(1)PR例は12例(57.1%)存在し,根治Bとなった症例が7例存在した.(2)部位別奏効率は,No. 16リンパ節転移64.7%,原発巣47.6%,肝転移40%,腹膜播種11.1%であった.(3)21例の50%生存期間(MST)は322日,1生率40.5%であった.PR 12例はMSTが471日で,無効例は209日であった.(4)根治度別では,根治BのMST 835日に対し,根治Cは310日で17.5か月MSTが延長していた.(5)治療関連死亡,grade 4は1例もなく,grade 3以上の有害事象は白血球減少19.0%,貧血14.3%,口内炎9.5%などで安全性が確認された.【結語】FLP療法によるNACは,非治癒因子がNo. 16リンパ節転移である場合に治療効果が期待でき,PR例および根治B症例には生存率の向上も認められた.
索引用語
neoadjuvant chemotherapy, advanced gastric cancer, abdominal para-aortic lymph node metastasis
日消外会誌 31: 2199-2205, 1998
別刷請求先
梨本 篤 〒951-8566 新潟市川岸町2-15-3 新潟県立がんセンター新潟病院外科
受理年月日
1998年7月22日
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