症例報告
肛門腺由来粘液癌の1例
大東 誠司1), 小川 真一郎, 柵瀬 信太郎, 西尾 剛毅, 荒川 健二郎2)
聖路加国際病院外科1), 荒川医院2)
症例は70歳の女性.肛門痛と出血を主訴に近医を受診し,10時方向に弾性,硬の腫瘍を指摘され当科に紹介された.内視鏡では歯状線上に浅い潰瘍を有する管外性の腫瘍で生検で腺癌と診断された.手術は腹会陰式直腸切断術および膣後壁合併切除術を行った.病理組織学的には粘液癌で,内外肛門括約筋層を中心に進展しており肛門腺由来と診断された.大きさ27×15×18 mm a1n0H0P0M(-); stage II ly1v3 ew0であった.術後5か月後に右鼠径リンパ節転移で再発し,鼠径部リンパ節郭清術を追加したが,現在のところ新たな再発は認めていない.肛門腺由来粘液癌は肛門管癌のなかでもまれであり,進行は緩徐あるが鼠径リンパ節転移が多く遠隔転移さらには局所再発が問題とされている.このため早期発見が重要であり,痔核関連疾患に類似した初発症状を伴うことが多い本疾患を,初診時に見逃さないことが肝要である.
索引用語
mucinous carcinoma of anal gland, anal canal carcinoma
日消外会誌 31: 2284-2287, 1998
別刷請求先
大東 誠司 〒104-8560 東京都中央区明石町9-1 聖路加国際病院外科
受理年月日
1998年7月22日
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