膀胱ヘルニアの1例

児玉　雅治, 板野　聡, 寺田　紀彦, 堀木　貞幸, 後藤田　直人

医療法人　寺田病院

　患者は62歳の男性．60歳のとき両側鼠径部ヘルニアの手術を受けたが，術後1か月目より右鼠径部から右陰嚢に腫瘤の脱出を認め，排尿異常も出現した．CTでは右陰嚢内に腫瘤陰影が認められ，脱出したものは膀胱と腸管が考えられた．術中，右鼠径部内側に小さなヘルニア嚢を認め，術前に触れた手拳大の腫瘤はヘルニア内容とは別のものと判断し，膀胱内留置カテーテルに生食を注入したところ，腫瘤は膨張したため腫瘤が膀胱であると判断し，切除することなく還納した．鼠径ヘルニア，もしくは大腿ヘルニアの手術に際して本症の存在を念頭におくことも必要と考えられる．また，術中にヘルニア嚢以外の腫瘤を認めた場合，安易に切除せず，膀胱などの可能性を考慮すべきで，確認は膀胱内カテーテルヘの注入法が容易で有用であると考えられた．

索引用語
bladder hernia, inguinal hernia

別刷請求先
児玉　雅治　〒518-0441　名張市夏見3260-1　医療法人寺田病院

受理年月日
1998年7月22日

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