症例報告
重症急性膵炎後の精査中に発見された胆嚢癌合併膵胆管合流異常の1例
渡部 広明, 角 昭一郎, 漆畑 貴行, 岩崎 伸治, 佐々木 晋, 矢野 誠司, 仁尾 義則, 田村 勝洋
島根医科大学第1外科
症例は63歳の女性.平成4年8月,重症急性膵炎を発症し,保存的治療で軽快した.今回,胆石・仮性膵嚢胞に対する治療目的で紹介された.画像所見で胆嚢内に胆石と約1 cm径の隆起性病変を認め,ERCPでは合流異常が発見された.胆石,胆嚢ポリープ,膵胆管合流異常の診断のもと胆嚢・総胆管切除,Roux-en Yによる総肝管空腸吻合を行った.胆嚢には15個の胆石,多数の隆起性病変を認め,迅速病理検査で胆嚢癌と診断された.胆嚢癌の肉眼所見は,S0,Hinf0,H0,Binf0,P0,N(-),M(-),Stage I,R1,DW0,HW0,EW0であった.合流異常症における膵炎は一般に軽症にとどまるとされるが,胆石などの付加的因子が存在すれば重症化する場合もあるものと思われた.また膵炎症例では,合流異常の存在を念頭に置き,より早期に合流異常を発見し,胆道癌を含めた合併症の早期治療を行うことができるものと思われる.
索引用語
anomalous pancreaticobiliary junction, severe acute pancreatitis, gallbladder cancer
日消外会誌 31: 2359-2363, 1998
別刷請求先
渡部 広明 〒693-8501 出雲市塩治町89-1 島根医科大学第1外科
受理年月日
1998年9月16日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|