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第31巻 第12号 1998年12月 [目次] [全文 ( PDF 455KB)]
症例報告

腸閉塞で発症したクラミジア感染症Fitz-Hugh-Curtis症候群の1手術例

松本 勲, 高橋 一郎, 品川 誠, 吉田 政之, 山崎 四郎, 花立 史香

小松市民病院外科

 Fitz-Hugh-Curtis症候群(以下,FHCSと略記)はクラミジアや淋菌感染により引き起こされる肝周囲炎である.我々はFHCSから腸閉塞となり,手術を必要とした興味ある1例を経験した.症例は21歳の女性.右季肋部から臍周囲の疼痛と嘔吐を認めた.腹部単純X線写真上著明な小腸拡張と鏡面像形成を認め,腸閉塞と診断された.減圧チューブを挿入したが,症状が遷延したため手術を施行した.腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ,腹壁と肝表画,大網および腸管の間にviolin string状の癒着性索状物を多数認めた.この索状物が回腸を取りまき通過障害をおこしていた.また子宮および付属器の強い発赤を認めた.手術所見と血清クラミジアトラコマティス抗体陽性であることからクラミジア感染症による腸閉塞を伴ったFHCSと診断した.近年性行為感染症としてクラミジア感染が増加しており,性的活動性のある女性で右季肋部痛が先行する症例ではFHCSの関与を念頭に置くべきである.

索引用語
ileus, chlamydia trachomatis infection, Fitz-Hugh-Curtis Syndrome

日消外会誌 31: 2374-2378, 1998

別刷請求先
松本 勲 〒923-8560 小松市向本折町ホ60 小松市民病院外科

受理年月日
1998年9月16日

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