症例報告
脳転移で初発し4年4か月後に死亡したVater乳頭部癌の1剖検例
朝戸 裕, 牛島 康栄*, 原 彰男*, 隈元 雄介*, 石塚 裕人*, 下山 豊, 古田 一徳, 栗原 直人, 坂田 道生, 石原 雅巳
国立大蔵病院外科, 国立埼玉病院外科*
症例は57歳の女性.頭痛,嘔気,嘔吐,歩行時のふらつきを訴えて来院した.既往歴としては5年前に子宮頸癌で根治手術を施行し,組織型は扁平上皮癌であった. 脳造影CT検査で右前頭葉に単発性の造影される腫瘤を認め脳腫瘍と診断し,腫瘤全摘出術を行った.組織学的には高―中分化乳頭状腺癌であった. 2年1か月後に,左前頭葉に再度単発性の腫瘤が認められ腫瘤全摘出術が行われた.組織学的に高分化乳頭状腺癌と診断された. さらに1年9か月後には腋窩リンパ節に乳頭状腺癌の転移を認めた.腹部CT検査で膵周囲から大動脈周囲にリンパ節の腫脹と思われる所見を認めた.やがて黄疸も出現し,初回脳手術より4年4か月後に死亡し,剖検を行った.Vater乳頭部を中心に腫瘍があり,組織学的に高分化腺癌,Vater乳頭部癌,原発巣と診断された. Vater乳頭部癌の脳転移はまれであり文献的考察を加え報告する.
索引用語
metastatic brain tumor, cancer, ampulla of Vater
別刷請求先
朝戸 裕 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 国立大蔵病院外科
受理年月日
1998年10月14日
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