症例報告
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠損症を伴った膵癌患者に膵頭十二指腸切除術を施行した1例
飯野 聡, 高尾 尊身, 新地 洋之, 久保 昌亮, 愛甲 孝1), 小倉 芳人, 満田 和信, 萩原 一行2)
鹿児島大学第1外科1), 済生会川内病院外科2)
症例は64歳の男性.主訴は低血糖による意識消失発作,同時に膵嚢胞性疾患を指摘され入院となった.低血糖発作はACTH単独欠損症部分欠損型,膵嚢胞性疾患は膵頭部膵管内乳頭腺癌と診断された.ACTH単独欠損症と診断された後,術前は20mg/dayのヒドロコルチゾン経口投与を,術後は300mg/dayの経静脈的投与より開始し,術前量まで漸減した.また漸減時コントロールの指標として血糖値,血中Na値の推移に注目したところ有効であった.必要十分量のステロイド投与を行うことにより,合併症なく膵頭十二指腸切除術を行うことが可能であった.ACTH単独欠損症患者に対する外科手術の報告はわずか4例が散見されるにすぎず周術期管理は確立されていない.今回,我々は本症に対する周術期管理を中心に報告する.
索引用語
isolated ACTH deficiency, pancreatoduodenectomy
別刷請求先
飯野 聡 〒891-0175 鹿児島市桜ヶ丘4-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1998年10月14日
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