会長講演
門脈圧亢進症とともに―門脈圧亢進症治療の変遷―
二川 俊二
順天堂大学第2外科
門脈圧亢進症の治療は門脈外科として発展してきた.当初は門脈系下大静脈系血管吻合術が行われた.血管吻合術症例(110例)では術後脳症(Eck瘻症状群)が36.4%と高率に発症した.この脳症は吻合を閉鎖すれば消失することが証明され,積極的に吻合閉塞術が行われた.QOLの不良から血管吻合術に代わる術式として食道離断を中心とする直達手術が発表され,直達手術が主流となった.教室で経験した直達手術症例は経胸食道離断術413例,経腹食道離断術40例,Hassab手術123例の計576例である.10年再発率9.5%とほぼ満足すべき成績が得られた.その後,内視鏡的硬化療法(EIS)の導入,普及により,食道胃静脈瘤に対する治療は大きく変遷した.今日では手術に代わってEISが治療の主流となってきた.最近では静脈瘤結紮術(EVL)や,Interventional radiologyの手法を用いたTIPS,B-RTOなども加わった.しかし,これら非手術的な手法による治療の困難例や高い再発率を考えると,現在でも手術の果たす役割は決して小さくはない.長期予後が期待されるIPH, EHO,Child A肝硬変症などでは積極的な手術適応があるものと考えられる.
索引用語
portal hypertension, portosystemic shunt, Sugiura procedure, Hassab's procedure, endoscopic injection sclerotherapy
別刷請求先
二川 俊二 〒113-0033 東京都文京区本郷2-1-1 順天堂大学第2外科
受理年月日
1999年1月27日
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