症例報告
腹腔鏡下大腸切除術後に発症した肺塞栓症の1例
中村 文隆, 道家 充, 中村 透, 宮崎 恭介, 七戸 俊明, 成田 吉明, 増田 知重, 樫村 暢一, 松波 己, 加藤 紘之*
手稲渓仁会病院消化器病センター外科, 北海道大学医学部第2外科*
腹腔鏡補助下腸切除術後の肺塞栓症の1例を報告する.症例は67歳の男性で,早期大腸癌の診断にてリンパ節郭清を伴う下行結腸切除術が施行された.気腹は小切開法,体位は骨盤低位にて炭酸ガス気腹圧を10~12mmHgに保った.手術時間は270分であった.術中・術後経過は良好であったが,術後7日目の起床時,突然の胸部痛を訴えた.肺血流シンチで左S5の区域性の血流の欠損を認め,肺塞栓症と診断し,ヘパリンによる抗凝固療法を行った.その後,症状はしだいに軽快し退院となった. 本邦における消化器疾患に対する腹腔鏡下手術後の肺塞栓症の報告はこれまで6例に過ぎず,腸切除術後では自験例を含め2例目であった.当院では現在まで880例の腹腔鏡下手術を行っているが,本症の発症は自験例のみで,その発症率は0.11%となる.肺塞栓症はまれであるが,腹腔鏡下手術の重篤な合併症のひとつであり,常にその予防と発症に留意することが肝要である.
索引用語
laparoscopy-assisted colectomy, postoperative complication, pulmonary thromboembolism
別刷請求先
中村 文隆 〒006-8555 札幌市手稲区前田1条12-355 手稲渓仁会病院消化器病センター外科
受理年月日
1998年11月13日
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