原著
腹腔内洗浄細胞診の臨床的意義
梨本 篤, 藪崎 裕, 土屋 嘉昭, 筒井 光広, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
新潟県立がんセンター新潟病院外科
1988年より潜在的な腹膜播種(P)を診断する目的でダグラス窩洗浄細胞診(CY)を胃癌症例673例に施行してきた.P0,CY(-)461例,P0,CY(+)40例,P1 71例,P2 44例,P3 57例であった.CYはPapanicolaou染色を用い,CEA免疫組織染色を補助診断として併用した.CY(+)は155例(23.0%)であり,陽性率はP0 8.0%,P1 46.5%,P2 65.9%,P3 93.0%であった.5生率はP0, CY(-)55.9%,P0,CY(+)16.7%,P1 11.6%,P2 2.7%であり,P0,CY(+)はP1に類似していた.P0,CY(+)および,P1でも根治度Bが根治度Cより良好であったが,P2,P3では差がなかった.CYに対しCEA染色を施行した症例のうち,P0,CY(+)24例のCEA陽性率は66.7%であり,P(+),CY(-)28例のCEA陽性率は28.6%であった.また,CYの診断困難例に対する鑑別にはCEA染色が有用であった.H0,T3,4の切除胃癌496例を対象に多変量解析を施行したところ,根治度,t因子,n因子,CY,組織型が独立した予後因子であった.以上より,潜在的Pを診断する手段としてCYは有意義であり,進行胃癌の独立した予後因子であった.
索引用語
washing cytology, immunocytochemical staining of CEA, advanced gastric carcinoma, peritoneal dissemination, prognostic factor
別刷請求先
梨本 篤 〒951-8566 新潟市川岸町2-15-3 新潟県立がんセンター新潟病院外科
受理年月日
1998年11月13日
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