症例報告
大腸内視鏡前処置で誘発されたマロリーワイス症候群の1例
西田 幸弘, 濱路 政靖, 坂口 寛正, 宮崎 知, 久原 章雄, 石田 雅俊, 伊藤 崇司
東大阪市立総合病院外科
大腸内視鏡の前処置として用いた腸管洗浄剤であるニフレックRに誘発された胃噴門部漿膜下筋層断裂の1例を経験した.患者は58歳女性で,1,800mlを約30分で飲用直後より嘔吐し,次第に新鮮血を混じるようになったので,内視鏡を施行したところ,噴門直下小彎から出血していた.内視鏡的止血が奏功せず,開腹術を施行した.噴門周囲に硬結を触知したので,噴門側切除を施行したが,組織学的には固有筋層の漿膜下までの急性裂創で,悪性病変は認めなかった.同剤によるマロリーワイス症候群を本邦報告例8例と合せて検討し,本症候群7例とBoerhaave症候群4例の海外報告例11例と比較した.大腸内視鏡の前処置として大量の腸管洗浄剤を飲用させる際には,その飲用速度を明確に指示しつつ,一般状態の観察と合併症に対する説明と対応が必要と考えられた.
索引用語
colonic lavage, Mallory-Weiss syndrome, Boerhaave syndrome
別刷請求先
濱路 政靖 〒578-0947 東大阪市西岩田3-4-5 東大阪市立総合病院外科
受理年月日
1998年12月9日
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