症例報告
食道癌術後に挙上胃管が右気管支動脈と奇静脈弓により絞扼壊死をきたした1症例
福長 洋介, 東野 正幸, 谷村 愼哉, 藤本 泰久, 水上 健治, 山崎 修, 松山 光春, 堀井 勝彦, 奥野 匡宥, 平田 早苗
大阪市立総合医療センター外科, 消化器外科
今回われわれは,胸部食道癌に対する高位胸腔内胃管吻合術後に,右気管支動脈と奇静脈弓により胃管の絞扼壊死をきたした症例を経験したので報告した.症例は59歳の男性.IuImの1pl+0-IIb型の高分化型扁平上皮癌に対して,低容量シスプラチンと5FUによる術前化学療法を2週間行った後,胸部食道全摘・3領域リンパ節郭清・全胃管高位胸腔内吻合術を施行した.第4病日にショックとなりドレーンより消化液の流出を認めたため,縫合不全による縦隔炎と診断した.再開胸すると,右気管支動脈と再縫合した奇静脈弓に挟まれた挙上胃管がその口側で壊死穿孔していたため,壊死部胃管切除・頸部食道外瘻術を施行した.術後はMOFに陥ったが集中治療にて回復し,4か月後に左結腸による消化管再建術を施行し軽快退院した.高位胸腔内での胃管再建は,安全性が高く近年注目されているが,右気管支動脈と奇静脈弓による絞扼壊死の報告は今回が初めてである.右気管支動脈をその分枝近くの大動脈弓付近まで剥離する,あるいは奇静脈弓の再縫合をしない,またはゆるくするなどの工夫が必要と思われた.
索引用語
necrosis of substituted stomach, esophageal cancer, intrathoracic esophagogastrostomy
日消外会誌 32: 1002-1006, 1999
別刷請求先
福長 洋介 〒534-0021 大阪市都島区都島本通2-13-22 大阪市立総合医療センター消化器外科
受理年月日
1998年12月9日
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