脾被膜下血腫により発見された膵頭部癌の1例

田村　幸穂^1）, 佐藤　茂^1）, 片田　夏也^1）, 笹本　浩^1）, 桜本　信一^2）, 比企　能樹^2）, 柿田　章^2）, 西巻　博^3）

相模台病院外科¹⁾, 北里大学外科²⁾, 北里大学放射線科³⁾

　脾被膜下血腫を契機として発見，切除しえた膵癌を経験した．症例は48歳の男性で上腹部痛，便秘を主訴に来院．CT検査にて脾外側に血腫を認めた．原因不明の脾被膜下血腫の診断にて開腹術施行．脾被膜下血腫および，その破裂による腹腔内膿瘍の診断にて腹腔内洗浄およびドレナージ術施行．術後，炎症反応の遷延，高アミラーゼ血症が持続し，脾被膜切開開放部のドレーンより膵液瘻を認めた．3か月後のCTにて膵頭部に12mmの腫瘤を認め，ERCPにて主膵管は，膵頭部で狭窄像を呈し，これより末梢は数珠状拡張を示し，膵頭部の膵管2分岐は広狭不整を呈していた．以上より慢性膵炎および膵頭部癌が強く疑われ，膵頭十二指腸切除術を施行．2.0×1.5cmの膵癌でStage IIIの進行膵癌であった．本症例の脾被膜下血腫は膵癌による随伴性膵炎より発生したものであり，発生機序を的確に診断すれば膵癌の早期発見，早期切除が可能であるものと思われた．

索引用語
subcapsular splenic hematoma, pancreatic carcinoma, chronic pancreatitis

別刷請求先
田村　幸穂　〒228-8555　相模原市北里1-15-1　北里大学外科

受理年月日
1998年12月9日

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