背景肝因子にもとづく肝細胞癌手術例の遠隔期の病態とQOL

上野　信一, 田辺　元, 塗木　健介, 吉留　伸郎, 木原　研二, 前村　誠, 愛甲　孝

鹿児島大学医学部第1外科

　背景肝病変にもとづく肝細胞癌手術203例の遠隔期の病態とQOLについての検討を行い，以下の結論を得た．(1)肝細胞癌切除例のQOLは，術後1年を過ぎるとおおむね良好であるが，初回手術時・再発時のInformed consentは重要である．(2)再発症例は，無再発期間が1年以内あるいは再発治療中の場合にとくにQOLが低下する．(3)Normal-CPH症例の比較的良好な予後・QOLに対し，CAH症例は早期からの易再発性と，再発・肝炎治療による社会的，精神的機能の低下が問題である．また，LC症例も易再発性であるが，約50％は多中心性発生であり，さらに，術後高度合併症発生例で重篤な長期PS低下がみられる．以上のことから，長期予後・QOLを考慮したHCCの外科的治療戦略として，Normal-CPH症例は根治性を重視した肝切除，CAH症例は無再発期間を延長するための効果的な肝障害増悪防止・再発予防治療，さらに，LC症例は初回・再発時の治療法選択がとくに重要と考えられた．

索引用語
hepatocellular carcinoma, quality of life after hepatectomy, multi-centric occurrence

別刷請求先
上野　信一　〒890-0075　鹿児島市桜ケ丘8-35-1　鹿児島大学医学部第1外科

受理年月日
1999年1月27日

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