浸潤性膵管癌に対する治療戦略―5年生存15例の検討から

高橋　伸, 相浦　浩一, 斎藤　淳一, 早津　成夫, 北島　政樹, 尾形　佳郎^＊

慶應義塾大学外科, 栃木県立がんセンター外科^＊

　現在までに切除した浸潤性膵管癌170例のうち，5年生存した15例を検討し，浸潤性膵管癌の治療戦略を再考した．15例の術式，病理組織学的所見，予後ならびに術後QOLについて検討した．生存期間は65～182か月で4例が癌死している．術式はPD 13例，TPとDPが各1例で，PDの5例とTPの1例に門脈切除を施行した．総合的進行度はstage Iが1例，IIが4例，IIIが3例，IVaが6例，IVbが1例であった．治療法は手術のみが4例，手術のほかにFAMTなどの化学療法を3例，術後体外照射を2例，最近の症例には門脈内抗癌剤持続投与（PC）を6例，うち4例にはIORTも施行した．全員が復職可能であり，Performance Status（PS）はPS0が13例，PS1が2例と良好であった．浸潤性膵管癌の術後経過を見ると，再発を契機にPSが悪くなる例が大多数であり，再発までは比較的良好な状態であった．現時点ではまだQOLよりも根治性を重視して治療すべきであり，D2手術+IORT+PCは有効な治療法と考えられた．

索引用語
invasive ductal carcinoma of the pancreas, 5-year survivor, pancreatoduodenectomy

別刷請求先
高橋　伸　〒160-0016　東京都新宿区信濃町35　慶應義塾大学外科

受理年月日
1999年1月27日

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