特集
膵癌長期生存例からみた浸潤性膵管癌に対する治療戦略
羽鳥 隆, 今泉 俊秀, 吉川 達也, 中迫 利明, 原田 信比古, 高崎 健
東京女子医科大学消化器外科
1996年までに切除した浸潤性膵管癌438例のうち,5年以上長期生存した長期生存群17例と,根治度A,Bがえられたものの1年未満で癌再発死亡した早期(再発)死亡群29例を対象とし,膵後方浸潤(rp)の有無別に組織学的所見,術式,再発様式,quality of life(QOL)について比較検討した.rp(-)例では,PL郭清を伴うD1+αが多かったが,ともに,膵外神経叢浸潤(p1)は陰性で,長期生存群でリンパ節転移n(+)が33%と少なかった.早期(再発)死亡群では肝転移が75%であった.rp(+)例では,PL郭清を伴うD1+αまたはD2が行われ,長期生存群でn(+)が38%と少なく,乳頭腺癌や高分化型管状腺癌が75%と多かった.早期(再発)死亡群では肝転移,後腹膜再発が68%,40%で,再発に伴うQOLの低下がみられた.以上より,rp(-)例ではD1+α以下の術式と効果的な肝転移対策,rp(+)例ではPL郭清を伴うD2と局所制御のための補助療法,効果的な肝転移対策が膵癌長期生存には必要と考えられた.
索引用語
pancreatic cancer, long-term survivors of the pancreatic cancer, tumor invasion to the retroperitoneal tissue
日消外会誌 32: 1089-1093, 1999
別刷請求先
羽鳥 隆 〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1 東京女子医科大学消化器外科
受理年月日
1999年1月27日
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