予後因子ならびに手術術式からみた浸潤性膵管癌の治療戦略

天野　穂高, 高田　忠敬, 安田　秀喜, 吉田　雅博

帝京大学第1外科

　これまでの，本邦における浸潤性膵管癌（膵癌）に対する治療方針は，拡大手術が一般的であった．しかし，高度進行例では，拡大手術によっても予後の改善は明らかではなく，遠隔成績や術後のquality of life（QOL）を考慮した手術適応・術式決定が重要な課題となってきた．今回の検討では，腫瘍の進展が高度になるに伴い有意に予後不良であったが，門脈系への浸潤では，浸潤例の中にも長期生存を認めた．リンパ節郭清ではn₁症例に対するD₀，D₁，D₂の間に有意な生存率の差を認めた．幽門輪温存膵頭十二指腸切除術はWhippleと比較して，有意に予後良好であり，また，術後のQOLに優れ，膵癌に対する基本的な術式と考えられた．長期生存には，治癒切除が必要であり，治癒切除を可能とするリンパ節郭清，門脈合併切除をふくむ後腹膜郭清が重要と考えられ，現時点での治療方針と考えられた．

索引用語
invasive ductal carcinoma of the head of the pancreas, extended pancreatoduodenectomy, pylorus-preserving pancreatoduodenectomy

別刷請求先
天野　穂高　〒173-8605　東京都板橋区加賀2-11-1　帝京大学医学部第1外科

受理年月日
1999年1月27日

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