長期予後からみた膵頭部癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と幽門輪切除膵頭十二指腸切除術の意義

神谷　順一, 梛野　正人, 上坂　克彦, 湯浅　典博, 佐野　力, 二村　雄次

名古屋大学第1外科

　教室では膵頭部癌におけるリンパ節転移の検討結果から，1990年以後は幽門下リンパ節の郭清を伴った幽門輪温存膵頭十二指腸切除術（PPPD）を膵頭部癌の標準術式として行ってきた．95年8月以降は，膵頭上部前方被膜や十二指腸第一部に癌浸潤を認める症例に対して，幽門輪まで切除する膵頭十二指腸切除（PRPD）を行い，胃温存による術後QOLの向上を図ってきた．PPPD・PRPDで胃を温存した群（29例）と90年以前の標準PD群（53例）の術後生存期間を比較検討して，術式の意義を検討した．PPPD・PRPD群の累積生存率は，1年51％，3年7％で，標準PD群の1年43％，3年13％と差は認めなかった．両群を総合的進行度やリンパ節転移の程度別に比較しても差はなかった．この結果から，幽門下リンパ節の郭清を伴ったPPPDやPRPDは，膵頭部癌に対して積極的に施行してよいと考える．

索引用語
carcinoma of the head of the pancreas, pylorus-preserving pancreatoduodenectomy, pylorus-resecting pancreatoduodenectomy

別刷請求先
神谷　順一　〒466-8550　名古屋市昭和区鶴舞町65　名古屋大学医学部第1外科

受理年月日
1999年1月27日

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