症例報告
続発性Budd-Chiari症候群による外側区域広範囲壊死により肝不全死した1例
松田 政徳, 藤井 秀樹, 茂垣 雅俊, 松本 由朗
山梨医科大学第1外科
症例は44歳の男性.B型肝炎ウイルスキャリアー.肝右葉の肝細胞癌の診断で肝右葉切除術を受けた.腫瘍は最大径6.0cmの中分化型肝細胞癌で,肝内転移と被膜浸潤を認めた.術後に肝動脈注入療法を施行.14か月後,肝内側区域と外側区域に再発巣を認め,開腹下にマイクロ波焼灼術を行った.4か月後のCT検査で,肝左葉に多発性の腫瘤像と中肝静脈内から下大静脈に腫瘍栓を認めた.その2か月後のCTでは,中肝静脈の腫瘍栓は右房に達し,外側区域はlow densityを示し,うっ血性の変化が示唆された.その後,肝性昏睡が急激に進行し約10日後に死亡した.剖検では,内側区域に再発腫瘍を認め,連続性に中肝静脈,さらに右房にいたる腫瘍塞栓が形成されていた.左肝静脈根部は腫瘍栓により閉塞していた.本症例は続発性のBudd-Chiari症候群を呈し,外側区域肝細胞のうっ血と広汎な壊死により急速に肝不全が進行し死亡したものと考えた.
索引用語
Budd-Chiari syndrome due to hepatocellular carcinoma, venous out flow obstruction, liver failure
日消外会誌 32: 1208-1212, 1999
別刷請求先
松田 政徳 〒409-3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 山梨医科大学第1外科
受理年月日
1998年12月9日
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