症例報告
舌転移をきたした胃癌の1例
安本 和生, 平野 晃一, 川島 篤弘*
富山逓信病院外科, 金沢大学医学部第1病理学教室*
胃癌術後に舌転移をきたしたきわめてまれな症例を経験した.症例は65歳の男性.胃体上部の進行胃癌のため,胃全摘術とD2リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,中分化型管状腺癌,3型,ss,ly0,v2,n1で,総合的進行度はH0,P0,t2,n1のstageIIであった.術後約1年目に,血清CA19-9値の再上昇を認め,同時期に臍部右側に皮下腫瘤が出現した.病理組織学的に胃癌の皮膚転移と診断した.血清CA19-9値はその後も漸増し,経過中舌左側の瀰漫性腫大も認められた.舌腫大部からの生検組織像とCA19-9免疫染色陽性所見から胃癌の舌転移と診断した.自験例は舌,皮膚およびリンパ節以外には明らかな遠隔転移を有さなかった.また,癌関連遺伝子の検討では胃原発巣の腫瘍先進部,舌および皮膚転移巣においてp53の強発現を認めた.p53遺伝子変異が異癌の進展に関与している可能性を示唆した.
索引用語
gastric cancer, metastasis to the tongue, metastasis to the skin
日消外会誌 32: 2105-2109, 1999
別刷請求先
安本 和生 〒930-8798 富山市鹿島町2-2-29 富山逓信病院外科
受理年月日
1999年3月31日
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