症例報告
回腸重複症を併存し,異所性胃粘膜による多発小腸瘻からイレウスを発症した1例
福井 貴巳, 横尾 直樹, 吉田 隆浩, 田中 千弘, 加藤 達史, 東 久弥, 白子 隆志, 山口 哲哉, 岡本 清尚*
高山赤十字病院外科, 同 病理*
イレウスを契機に発見された,多発小腸瘻と異所性胃粘膜を伴う重複腸管の1例を経験したので報告する.症例は71歳の女性.イレウス症状にて,当科紹介受診.腹部は膨満し,軽度の圧痛,筋性防御を認めた.腹部単純X線およびCTにて,高度に拡張した小腸ガス像を認めたことより小腸イレウスと診断,同日,緊急開腹術を施行した.手術所見はトライツ靭帯より約130cm肛門側の小腸間に1か所の瘻孔形成を認めた.また,回盲部より約100cm口側に高度に拡張した小腸が癒着,同部位口側に近接して重複腸管を認めた.さらに高度に拡張した小腸間に計3か所の瘻孔形成を認めた.トライツ靭帯より約130cm肛門側の瘻孔部分は瘻孔切除にとどめ,重複腸管は拡張腸管とともに切除し手術を終了した.病理組織所見では小腸本管に異所性胃幽門腺を認めた.本症例は,胃所性胃粘膜より瘻孔が形成されたことが,イレウスの一因となった極めてまれな症例と考えられた.
索引用語
ileal duplication, heterotopia of gastric mucosa, multiple fistulas in the small intestine
日消外会誌 32: 2139-2143, 1999
別刷請求先
福井 貴巳 〒506-8550 高山市天満町3-11 高山赤十字病院外科
受理年月日
1999年3月31日
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