臨床経験
高齢者上腸間膜動脈閉塞症に対する1期的吻合の有用性と安全性
森脇 義弘, 神谷 紀之, 菊池 光伸, 小澤 幸弘, 杉山 貢, 原田 博文*, 国崎 主税*, 今井 信介*, 小林 俊介*, 笠岡 千孝*
横浜市立大学医学部附属浦舟病院救命救急センター, 藤沢市民病院外科*
高齢者急性上腸間膜動脈(SMA)閉塞症,小腸壊死に対する広範囲小腸切除後に,1期的吻合を行ったので,その有用性と安全性を検討した.83,78,75歳の女性の急性SMA閉塞症3例に広範囲小腸切除を行った.小腸壊死と血性腹水を認めたが,腸管穿孔はなかった.数cmの小腸温存には固執せず,確実に安全と思われる部位で切離し,器械吻合で1期的に再建した(側端,側端,端側吻合).残存小腸は,Treitz靭帯から30cm,幽門輪から50cm, Treitz靭帯から30cm,経口摂取は,各16,17,10病日から開始した.経口摂取後の排便回数は,各3~4,0~1,15回前後/日と端側吻合で頻回の傾向にあった.維持輸液も各2,000ml,1,000,2,000~1,000ml/日前後であった.全例,縫合不全や残存腸管の虚血の進展の徴候はなかった.高齢であることから消化吸収能をある程度犠牲にして,空腸瘻とせず一期的に吻合を行ったことで,近位空腸瘻のデメリットを回避した.術後造影検査での造影剤の移動速度から,側端吻合が消化,吸収に有用と思われた.
索引用語
acute mesenteric arterial occlusion, elderly patients
日消外会誌 32: 2158-2162, 1999
別刷請求先
森脇 義弘 〒232-8588 横浜市南区浦舟町3-46 横浜市立大学医学部附属浦舟病院救命救急センター
受理年月日
1999年3月31日
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