会長講演
食道癌治療とともに
小玉 正智
滋賀医科大学第1外科
私が食道癌治療に約30年間幸運にも携わることが出来たので,その臨床・研究経験をふまえ21世紀への展望を述べた. 臨床面からは,(1)2領域~3領域郭清の問題,集学的治療の一環として行ってきたCDDP+PEP+VDS 3者併用療法に対する臨床的評価と問題点と少量CDDPと5FUの持続投与を中心としたプロトコールの評価,(3)表在癌,特にm3からsm1の治療法の選択に関して,今後の課題を提示した. 基礎的な立場からは,食道癌における細胞周期を制御する因子としてcyclin D1,癌浸潤・転移に関わる因子としてuPA蛋白とPAI‐2蛋白の重要性に着目すると共に,食道癌の遺伝子異常をスクリーニングする方法としてのcomparative genomic hybridization法(CGH法),およびHUMARA法によるクローン解析の現状を示した.さらに新しい治療法として,癌特異免疫療法の一環としてのワクチン療法,Antisense療法,および遺伝子導入によるアポトーシス誘導の3つのテーマをとおして基礎的研究の成果と今後の可能性について述べた.
索引用語
esophageal cancer, treatment of esophageal cancer, gene abnormality, vaccine therapy for esophageal cancer, gene introduction
日消外会誌 32: 2197-2207, 1999
別刷請求先
小玉 正智 〒520-2192 大津市瀬田月の輪町 滋賀医科大学第1外科
受理年月日
1999年6月22日
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