症例報告
食道壁内転移を伴った幽門部胃癌の1例
北條 隆, 石井 誠一郎, 白杉 望, 北川 雄光, 相浦 浩一, 有沢 淑人, 掛札 敏裕, 納賀 克彦, 福田 純也*
川崎市立川崎病院外科, 同 病理*
食道壁内転移を認めた幽門部胃癌の1例を報告する.症例は50歳の男性,胃部不快感,嘔吐を主訴として近医受診.胃癌による幽門狭窄と診断され,精査,加療目的にて当院外科入院となった.上部消化管内視鏡により胃角部小彎から前庭部に2'型胃癌を認めた.さらに食道内,門歯列より39cmの胸部下部食道にルゴール不染の隆起性病変を認めた.生検の結果,いずれの病変も低分化型腺癌で,両病変の粘膜間に連続性は認めなかった.開腹時,腹水細胞診検査で悪性細胞を認めたため,根治性はないと判断し姑息的幽門側胃切除術,B-II再建を行った.病理組織学的検索では,口側断端に癌の露出は認めず,食道の病変は胃癌の転移と考えられた.術後CDDP,UFT併用療法により,食道転移巣は消失したが,7か月目に脳転移により死亡した.非連続性食道壁内転移を来した胃癌症例の報告はまれで,大部分は噴門部進行胃癌であり,幽門部胃癌症例は報告されていない.
索引用語
gastric cancer, intramural metastasis to the esophagus, adjuvant chemotherapy for advanced gastric cancer
日消外会誌 32: 2248-2252, 1999
別刷請求先
石井 誠一郎 〒210-0013 川崎市川崎区新川通12-1 川崎市立川崎病院外科
受理年月日
1999年4月28日
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