症例報告
門脈cavernous transformationが併存した先天性胆管拡張症の1例
吉田 克嗣, 岡本 好史, 加藤 岳人, 千木良 晴ひこ, 柴田 佳久, 尾上 重巳, 江崎 稔, 佐野 正行, 深谷 昌秀, 前多 松喜*
豊橋市民病院外科, 同 病理*
症例は40歳の女性で,右上腹部痛を主訴に来院した.画像診断でAlonso-Lej I型先天性胆管拡張症と診断され,血管造影で門脈cavernous transformationを認めた.1995年3月1日胆管切除,胆嚢摘出,胆管空腸吻合術を施行した.発達した側副門脈のため手術操作に難渋し,約11時間を要し出血量は5,615gであった.門脈圧は開腹時15cmH2O,胆管切除後16cmH2Oと変化しなかった.術後血管造影では小網内,後腹膜の海綿状血管像が温存されていた.患者は3年10か月間健在である.門脈cavernous transformationを伴う先天性胆管拡張症はまれな病態で,本邦報告例はわずか3例にすぎず,胆管切除例は自験例が最初である.この病態では,本来良性疾患である先天性胆管拡張症の手術リスクが高く,胆管切除により生体に有益な門脈側副血行路の一部が失われるという不利益があるため,手術適応や術式選択を慎重に決定すべきである.
索引用語
congenital biliary dilatation, cavernous transformation of the portal vein
日消外会誌 32: 2263-2267, 1999
別刷請求先
吉田 克嗣 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学第1外科
受理年月日
1999年3月31日
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