症例報告
膵巨細胞癌(多形細胞癌)の1切除例
葦沢 龍人, 北村 慶一, 村野 明彦, 寿美 哲生, 山下 晋矢, 勝又 健次, 山本 啓一郎1), 青木 達哉, 小柳 泰久2), 海老原 善郎3)
東京医科大学八王子医療センター消化器外科1), 東京医科大学外科2), 同 病理3)
症例は55歳,女性.主訴は背部痛.US,CTにて膵体部に腫瘤を,ERPでは体部主膵管の狭窄像,血管造影では脾動脈の広狭不整像を認め,膵体部癌の診断のもと膵体尾部脾合併切除術を施行した.腫瘍は3×3.5cmの灰白色楕円形で膨張性発育を示し,病理組織学的に膵原発の巨細胞癌(多形細胞癌)と診断された.自験例を含む本疾患36例の臨床所見は平均年齢63.8歳(33~84歳),男女比26:10,初発症状は腹背部痛が15例と最も多かった.占居部位は頭部15例,体尾部17例と膵管癌と比較して体尾部に好発する傾向があった.画像所見は,USでは22例中15例が低エコー像,CTでは25例中19例が低吸収像,ERP上9例に狭窄像,5例に途絶像を認めたが通常膵管癌との差異は認められなかった.開腹術は20例に施行され治癒切除は8例であった.予後は33例中25例が1年以内と極めて不良であり,自験例も術後3か月で癌性悪液質により死亡した.
索引用語
pancreas cancer, giant cell carcinoma, pleomorphic carcinoma
日消外会誌 32: 2268-2272, 1999
別刷請求先
葦沢 龍人 〒193-8639 八王子市館町1163 東京医科大学八王子医療センター消化器外科
受理年月日
1999年3月31日
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