臨床経験
門脈分岐異常を伴った肝腫瘍に対する肝切除術の経験
尾関 豊, 立山 健一郎, 角 泰廣, 山田 卓也, 山内 希美, 坂東 道哉
国立東静病院外科
症例は62歳の女性.直腸癌切除後の検診で肝腫瘍を発見された.超音波,CTおよび血管造影で肝右葉に 5cm大の腫瘍と,肝門部から肝内に異常な走行の脈管を認めた.直腸癌肝転移の診断で手術を施行した.術中超音波検査によると門脈内側枝は肝外で門脈本幹から独立して分岐していた.さらに,内側枝分岐後の門脈右枝から肝門部で分岐し,中肝静脈の右側を走行する異常な枝(P8*)が存在した.外側枝は内側枝と連続せずに,P8*との交通枝を介して血流を受けていた.P8*から外側区域への門脈血流を温存するため,P8*を損傷しないように注意して肝右葉切除術を施行した.切除した門脈壁の組織学的検索では通常に比べて薄く,多数の複雑な異常分岐を示した.遡及的なCT像の検討で門脈本幹は膵前十二指腸後門脈の所見を呈し,分岐異常との関連が示唆された.門脈分岐異常例に対する肝切除術では術前,術中の注意深い観察が必要である.
索引用語
anomalous portal branching, prepancreatic retroduodenal portal vein, hepatectomy
日消外会誌 32: 2301-2305, 1999
別刷請求先
尾関 豊 〒411-8611 静岡県駿東郡清水町長沢762-1 国立東静病院外科
受理年月日
1999年3月31日
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