早期胃癌肝転移例におけるα-fetoprotein産生能の臨床病理学的，免疫組織学的検討

石原　省, 柳澤　昭夫^＊, 高橋　孝

癌研究会附属病院外科, 同　病理^＊

　早期胃癌肝転移再発例とα-fetoprotein（以下，AFPと略記）産生早期胃癌との関連を明らかにするため，1980年から1995年までに経験した早期胃癌肝転移症例14例（同期間内早期胃癌切除1,744例中0.8％）について検討した．14例は全例sm2～sm3で，組織型はtub1～tub2が13例，por1が1例，リンパ節転移が高率（10/14，71％）であった．これと同じ臨床病理学的背景を有し，肝転移なく生存中の早期胃癌症例30例を対照例とし，以下の所見を比較した．（1）原発巣病理組織像におけるhepatoid adenocarcinomaの所見：肝転移例6/14，対照例0/30（p=0.0004），（2）血清AFP値の異常：肝転移例9/14，対照例0/30（p<0.0001），（3）原発巣AFP染色陽性例：肝転移例5/14，対照例1/30（p=0.0089）．以上から早期胃癌肝転移例に占めるAFP産生胃癌の割合は高く，またAFP産生胃癌への分化が粘膜下浸潤の段階で起こっていることが示唆された．

索引用語
early gastric cancer, liver metastasis, AFP

別刷請求先
石原　省　〒170-8455　豊島区上池袋1-37-1　癌研究会附属病院外科

受理年月日
1999年5月25日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です